2019年10月21日月曜日

Bern .2




なをみさん

そうでした!ついあの旅行はなをみさんと出会った事ばかり思い出していましたが、あの旅行で膨大な数の宗教絵画を見たのを思い出しました。
それまで「美術館の絵は専門家からすばらしいとお墨付きをもらっているのだから、どれもありがたく見せていただかなければならない」と思っていたのに、毎日毎日暗いテンペラの宗教絵画を見続けたら「自分の心を動かしてくれる作品だけ見ればいい」という思いになりました。
作家自身にとっても自信作と駄作があるし、私たちが一生の間に出会える作品数も限りがあります。見る側も自分に響く作品との出会いを楽しんで、合わない作品はさっさと通り過ぎていいんですよね。きっとその次に心を震わせてくれる作品が待っているはずだし、また巡り巡って次の出会いの時にはその絵に心打たれる日がやってくるかもしれない。本物ならば、きっと誰かの心に残ってゆくはずです。

なをみさんの手紙から、自然が 暗い夜をマーブリングする空を私も一緒に見たような気がします。
時々、自然が創り出すものには敵わないと思い知らされます。ではなぜ私たちはそこから何かを創ろうとするのでしょうか。それが人間の愛すべきところで、そこにこそ私達が諦めてはいけない何かが残っている気がします。

陽子

追伸 
ルーブルのカバはメトロポリタン美術館と並んで今も私のお気に入りです。
今から3000年以上もの時間を超えて、あれを作った人のカバへの尊敬と愛情、粘土を撫でたその手の温かさが感じられるからです。彩色を終えたカバを見つめるその瞳はきっと笑っていたと思います。