2018年1月5日金曜日

湯川潮音『裸の王様』

昨年、シンガーソングライターの遠藤賢司さんがお亡くなりになりました
訃報を聞いてすぐにSWの湯川潮音さんに連絡をしました
なぜなら彼女は小さい頃から、エンケンさんと親子のように親しかったことを、
よく僕に話してくれてたから
そして幾日か経って彼女から連絡がありエンケンさんの為に
歌いたいって連絡がありました
それはエンケンさんとの思い出の場所、
渋谷のBYGで歌うから映像をお願いしたい、と、、、
そんな潮音さんの思いをカタチにすることに携われて、とても誇りに思います
天国のエンケンさんもきっと喜んで観てくれてると思います

以下、湯川潮音さんの言葉になります
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エンケンさんがいってしまってから
何も言葉にならなくて

ただただ空いた穴から
哀しみがあふれ出してきてしまうのをふさぐのに
いっぱいいっぱいの日々でした

私なりに私の王様と
音楽の神様、創造の神様と向き合って
ちゃんと「ありがとう」を伝える時間がほしくて
こんな贅沢な機会を与えてもらいました
エンケンさんと対決したBYGで

エンケンさんの音楽をはじめて聴いたとき
その奏でる音の向こうに
音楽以外のものがみえるという体験を生まれてはじめてしました

絵を描いているようでもあり

経を唱えているようでもあり

舞を舞うようでもあり

死の淵を眺めているようでもある

ああ本当の芸術というのはこんなにも奥深く
生きる上で背負うであろうあらゆる瞬間を
一音で表現するんだということを知りました

そして 光と影 喜びと哀しみ 善と悪は
同居するんだということも教わりました

エンケンさんは私にとってそんな存在だったので
幼い頃はもう魔法使いの怖いおじさんにしか見えなくて

楽屋に行くたび、ポケットやカバンから次々と嬉しそうに出してくる
お菓子やキャンディーには恐ろしいものが入っていると思い
その場では引きつった笑顔で受け取っても絶対に口にはしませんでした

それから数十年
作品やライブにも何度も共演の機会を与えていただくようになり
純音楽の友とも呼んでくださったり

やっとこの方も人間なんだということを理解し始めると
エンケンさんという人は、とてつもなく厳しくもとんでもなく優しい
いつ、なんどきでもキラキラとした好奇心の眼差しで世界を見つめている
永遠の少年のような人なんだということを知っていき

これからやっといろいろなお話や相談ができるかもしれないな
と思い始めていた頃でした

亡くなる半年前
私も身体の調子が悪いのを心配してくださり

エレキギターを掻き鳴らすのは、身体中からパワーがみなぎるから
きっと電気治療になるんだと思うと言って、爆音対決をしよう!とスタジオに誘ってくださいました

私は触ったこともない「爆破」と書かれたエフェクターやファルコンギターを渡され
巨大アンプ二台に挟まれながら
「ここで入るんだ!」と言われたところから
とにかく音を掻き鳴らしまくり、一時間以上アンプに乗ったり、ドラムを叩きまくり
流血したりしながら、二人で汗の水溜りができるまで対決しました

終わったあとは放心状態で
まっすぐ歩けなかったので、誘ってくれたお茶には行けなかったです

でもあのとき
「お世辞じゃないよ、凄いよ、本当にロックだ」
とおっしゃってくれた

もう汗も涙も一緒になんだかそのとき抜け落ちたようでした

最後にお会いしたのがそんな日だなんて
本当に感謝しかありません

私はエンケンさんがいたから音楽をはじめられたし
つづけられています

私の王様は永遠に死にません

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guitar and vocal 湯川潮音

violin 美央
viola 吉田 篤貴
viola 須原 杏
cello 徳澤 青弦

strings arrangement 徳澤 青弦
sound recording 原 真人
filming イタバシ ヒロノリ

director  岡野 隆司 (FOR flowers of romance)

at 渋谷BYG
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FOR flowers of romance   岡野 隆司