2018年12月29日土曜日

2019 spring-summer collection ”serendipity”

2019ssのコレクションは東野翠れんの写真展「Pendant 1957-201」から10枚の写真を選び
それに文章を添えた写真と記憶をコサージュという立体で編み上げた花々です

彼女の写真から
ペンダントが揺れるように
過去から未来へ、人の記憶から人へ、行きつ戻りつした”時”は、
どこからが彼女の記憶なのか
どこからが私の想像なのか
それは創造と現実のふたつが重なる瞬間に
記憶が花へと姿を変えてゆく不思議な”時”でもありました

そして、simmon(ジュエリーブランド)とともに
指輪について想像を巡らせた”時”は
相反する素材の金属と繊細な布とが
年月を経てどのように朽ちてゆくのかを想像できた”時”でもありました
リアルな未来と
私の想像する未来が同じであるなら
私と手にした誰かとで愛でた花を作りだしたことになります
それはタイトルの通りの”偶然の幸運”に他ならないのではないでしょうか

時とともに変わり続けた花をいつかこの目にするのを楽しみに待ちたいと思います

la fleur  岡野 奈尾美

“serendipity” la fleur - b1910 -

『浮遊する思考』 

彼女との会話はタンポポの綿毛を吹いたときのようである
ふぅーと吹くとあっという間に広がり、どこへともなく飛んでゆく
あんなところにもこんなところにもと思わぬ着地をしながら
話しが尽きることはない
それは言葉についてであったり、子供の話や、考え方だったりと話題も様々
会って、別れて、また会う
とても自然な形で会話をしている
言葉では、はっきりと通じていないと思うこともしばしば
けれども彼女が伝えたいことは感覚的に身体の中に入ってくる
会話と感覚についての面白い距離感である
その距離感が心地よさを携える
言葉でのやり取りは浮遊し、拡散し、はじまりも終わりもない
まるで彼女の写真箱の中そのもの
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大きく開いた花びらは華やかなデザイン
シルクの花柄のスカーフを染色して深みがある色あいです
花びらの縁はチラチラと白い絵の具をのせ
中心のフランス製の花芯と合わさってハッキリとした印象にしました
プリントの位置によって一つ一つのコサージュの雰囲気も少しずつ変わります
枝の部分はシルバー色のワイヤーを巻いて作りました
コサージュピン部分にネックレス用のリングを取り付け
革紐を通してペンダントとしてもご利用いただけます

“serendipity” la fleur - b1909 -

『錬金術師』 

私の手は魔法の手
心から願えばお望みのものをあなたのためにつくりましょう
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カラカラと音のするローダンセの花は、
繊細なコテをあて仕上げています
花びらの端がレッドとグリーンで印象の違うブーケになっています
コサージュピン部分にネックレス用のリングを取り付け
革紐を通してペンダントとしてもご利用いただけます

“serendipity” la fleur - a1908 -

『Flyway』 

ちょうちょ の通り道
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大きくカールした花びらは風で揺れて絡まったような表情
凛としたホワイトと、ミックスカラーは花柄プリントのスカーフを使用した
表情の違う2色になります
枝の部分はシルバー色のワイヤーを巻いて作りました
ミックスカラーはプリントの位置によって
一つ一つのコサージュの雰囲気も少しずつ変わります
コサージュピン部分にネックレス用のリングを取り付け
革紐を通してペンダントとしてもご利用いただけます

“serendipity” la fleur - b1907 -

『ただよう詩』

浅瀬の時は
どこまでも歩けるのだという
砂でお城を作った
流木の上で休んだ
水着の人
ダウンを着ている人
フリース
ジャケット
Tシャツの人
なんて自由なんだろう
誰も急いでいないし
早くして
という表情を誰もしない
この街には
急いで払わなきゃみたいなのも
ないねえという話しをした
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乾いた音がする、花が連なるコサージュ
ベージュには刺繍をほどこした生地、
ライトブルーには花柄のスカーフ生地を染めてニュアンスのある色に仕上げました
枝の部分はシルバー色のワイヤーを巻いて作りました
ライトブルーはプリントの位置によって
一つ一つのコサージュの雰囲気も少しずつ変わります
コサージュピン部分にネックレス用のリングを取り付け、
革紐を通してペンダントとしてもご利用いただけます

“serendipity” la fleur - a1906 -

『音楽の芽』

みんなそれぞれの内側に集中していて 
周りがどうというのは 
あまり気にならないのだ 

でも目が合えば 
優しい表情をするし 
質問にも友人のように答えてくれる
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指先よりも小さな花は
花弁を2枚貼り合わせた繊細で華奢な仕上がりになっています
ベージュはコットンとベルベットの2種類の素材を組み合わせ染色しています
モスグリーンは花柄のスカーフを使用しニュアンスのある色に仕上がっています
花柄プリントの位置によって一つ一つ違う色目になりますので
コサージュのニュアンスも少しずつ変わります。
枝部分はsimmonとコラボレーションをして製作しました
茎とピンが一体化した仕上がりになっています
モスグリーンには艶のあるシルバーを
ベージュにはマットなシルバーの枝の組み合わせになります

“serendipity” la fleur - a1905 -

『橙色の光』

レイアの家は楽園だ
むかし来た時に比べて
植物が増えている
庭の真ん中にジャスミンのアーチがジャグジーものこっている
庭で食事する
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透けるようなシルクの花びらを2枚はり合わせ、
枯れたような表情を出したローズ
小ぶりのブローチですが、存在感のあるブローチです
ニュアンスのある、果物のよう
なあまずっぱい色のピンクとベージュの2色です
枝部分はsimmonとコラボレーションをして製作しました
茎とピンが一体化した仕上がりになっています
ピンクには艶のあるシルバーを、
ベージュにはマットなシルバーの枝の組み合わせになります

“serendipity” la fleur - b1904 -

『100年後のコサージュ』

このメールには、私の知りたかった「100年後の私のコサージュ」の話がありました
私は、年間1000個~3000個のコサージュを作っています
もう何十年も作り続けているので、いくつ作ったかわかりません
それらは、人が着けているのを目にすることもなく、街に溶けていきます
どこに行くのだろう?とともに、ビンテージショップなどで見る、あらゆる国の手工芸のものは
どうして廃棄の運命を逃れることができたのか?
という正解のない問いを思い続けていました
ある時、大好きなビンテージショップのオーナーに
「たいして価値が無いものでも、今日まで残っている“もの”と
高くても残らなかった“もの”があるのはどうしてなのか?」と問うたところ
金額的な価値に関係なく「残るものは残るべきして残る」という答えでした
物やデザインは時間というふるいにかけられて、必ず淘汰されていきます
私のデザインした世界もこの世界のどこかで淘汰されると思っています
そして創るからには、その形の最後があります
イランの指輪の話には「100年後の私のコサージュ」の最後が描かれていると感じました
それとともに、日本に帰り着いたときその指輪は
イランの家族が込めた祈りを使い果たし、生命が閉じたのだと思いました
創ったものの生命とは、美術品になればなるほど、
命を削って作ったものの本来の力が発揮されるものだと思っています
この話にはもう一つ、指輪の淘汰と重なるように
新たに創られる物との螺旋を描くような”物体”の運命が見えました
永遠と続く、物の誕生と死について
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透けるように薄いシルクの花びらと、
うつむきかげんに咲く花が一つになったブーケです
儚いような凛としたような、二つの感覚の入り混じったコサージュです
カラーはオフホワイトのグラデーションの一色のみです
枝部分はsimmonとコラボレーションをして製作しました

茎とピンが一体化した仕上がりになっています

“serendipity” la fleur - b1903 -


『COME AND GO WITH ME』

私は旅の中でアクセサリーをつける事を学びました。
一切自分を飾る事を嫌っていた私でしたが、シルクロードの旅で現地の女性が身につけている装飾品の意味を知って、自分もつけたいと思うようになりました。それは、友情の印であり、身につける財産であり、結婚した女性であるという証明でした。
イランでお世話になった家族からモスクのドーム型の水晶とシルバーの指輪をもらった時は、それを身につけて旅をしている間、自分がその社会に受け入れられて、守られているという気持ちがとても強くなりました。(帰国後、個展の準備中に壊れてしまいました。修理をしようとしましたが、とても古いシルバーだったので、今のシルバーと純度が違って無理だと言われました。)
また、イランの国境から乗ったトルコ横断の長距離バスでのこと。乗り物酔いで私の方に思いっきり吐いた子供とずっと遊んであげたら、イスタンブ—ル直前で母子がバスを降りる際にシルバーの指輪を外してプレゼントしてくれました。お互い「ありがとう」「どういたしまして」の言葉すら言えなかったけれど、指輪を通してそのお母さんの「ありがとう、気をつけて、良い旅を!」というメッセーが伝わって指を見る度笑顔になり、心が温かくなり、またそれをはめていると自分が異国の女性たちに守られて強くなる気がしました(小学校時代からの親友が結婚して東京に引っ越す際にプレゼントしました)。
インドの友人が旅を続ける私にヒンズー教の聖なる言葉にルビーがついたペンダントトップをくれて、それを手に握るだけで心が静かになった事(いつか娘にあげようと思っています)。
インドの田舎で毎日通ったレストランで、いつも私のサービスをしてくれたおじいさんとは一度も会話をしなかったのに、お皿の下にいつもチップを置いて2ヶ月通った最後に、「明後日日本に帰るんだ」と言ったら、翌日私のお皿の上に琥珀の指輪を置いてくれた事(これは今も手元にあります)。
指輪やアクセサリーはどれもどこかに渡って行った思い出なので、貴金属の装飾品は「どこからかやってきて、どこかに去ってゆくもの」という感じがしています。
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しおれてうなだれたアネモネは
花柄のシルクの大判のスカーフに染色をほどこし
深みがある花の色にしました
フランス製の花芯がアクセントになり
表情豊かに仕上げました
枝の部分はシルバー色のワイヤーを巻いて作りました
パープルはプリントの位置によって
一つ一つのコサージュの色も少しずつ変わります
コサージュピン部分にネックレス用のリングを取り付け
革紐を通してペンダントとしてもご利用いただけます

“serendipity” la fleur - b1902 -

『指輪とは契約の印』

私が着けたのは左手の人差し指(10金のシンプルな細いリングです)
この小さな輪は、金属による温度差と質感、
重さを伝えながら、身を締め付けます
遠くからの印象はほとんどなく、
反対に本人には絶えず視界に入る状態です
これは、自らを縛る効果がある装身具なのですね
意図しなくとも、本人が“なにか”を意識したい意思表示だと思いました
指輪でなくとも、金属を身に着けることは、
それに近い感覚があるように思います
内に内に作用する効果
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ドライフラワーのようにしおれてうつむいたマーガレットの花は、
とても繊細な花びらが自由に遊んでいるようです
ベージュにはコットンの花びらを使用し、
マスタードにはシルクの大判のフラワープリントスカーフに染色をほどこし
印象が違うコサージュに仕上がっています
マスタードはプリントの位置によって
一つ一つのコサージュの雰囲気も少しずつ変わります
枝の部分はシルバー色のワイヤーを巻いて作りました
コサージュピン部分にネックレス用のリングを取り付け、
革紐を通してペンダントとしてもご利用いただけます

“serendipity” la fleur - a1901 -

『serendipity』

ものは永遠と生み出され
創った人の価値観に近い人の手に渡り
自分の道を探して残っていく

その使い続けられたものは
つかいたおされ、くたびれながら
くすみ、ほころび、形は変わり
壊れ、その命も閉じる
その時はすぐにくるかもしれない
けれど叶うなら永く人の手に渡り
時とともに変わり続けて愛でられたい

もしも
永くたくさんの人の手に渡ったのなら
それは私にとっての偶然の幸運に違いない
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クラシカルで丸みのあるバラの花に、
枝の部分はワイヤーを巻いて作ったコサージュです
密度があり薫ような表情が特徴です
花びらは薄いシルクを使用し、
品の良いベージュとオフホワイトと
スカーフ生地のプリント柄をアクセントに使った
ミックスカラーの2色です
ミックスカラーはプリントの位置が一つ一つ違うので、
コサージュの雰囲気も少しずつ変わります
またコサージュピン部分にネックレス用のリングを取り付け、
革紐を通してペンダントとしてもご利用いただけます


2018年12月1日土曜日

「Pendant 1957-2018 Suilen Higashino」    @minä perhonen kyoto

minä perhonen 京都店3F galleriaにて東野翠れん写真展を開催させていただきます
期間は12月7日(金)〜12月19日(水)まで
関西の方面の方にもぜひ観ていただきたいと思っております

「Pendant 1957-2018 Suilen Higashino」@minä perhonen 京都店3F galleria

東野翠れんさんが、自身の出産後の6年間に撮りためたという写真と
イスラエル人のおじいさまの遺品の中にあった
約60年前に撮影されたという記録の数々
約半世紀を超えた表現の間に横たわる
記憶の交換や同調。タイトルとなったpendant(パンダン)は
フランス語で「〜の間」という意味の言葉
まさに「時間の連なり」ということに思いを馳せる
翠れんさんの眼差しが、展示風景として立ち上がります

会期中の16日(日)14時より、トークイベントを開催いたします
東野翠れんさんと田中 景子さん(minä perhonenデザイナー
長江 青さん(minä perhonen PRディレクター)が
翠れんさんの写真について、それぞれの制作について語り合います 
ご参加をご希望の方は京都店にお問い合わせくださいませ

会期:2018年12月7日(金)〜12月19日(水)
12 : 00〜19 : 00 木曜定休
作家在店日、トークイベント:12月16日(日)
会場minä perhonen 京都店3F galleria
お問い合わせ:minä perhonen 京都店

「過去の痛み、歴史の重み、個人の傷跡ではない写真
ではなにを撮っているのかということを考えると
それは<ちょっと先の未来におく写真>ー 平和な世界がどんなところなのか
自分が忘れないためにも
いま目の前に見える一瞬の静けさ、光、その平安な時間を
今日、生きているということを祝福する写真を撮っているのだなと思う」
東野翠れん〜 

クリスマス前の京都へ、どうぞお出掛けください

FOR flowers of romance 岡野隆司