2018年6月21日木曜日

"Lovelorn” la fleur -b1851-


Swimming under the crescent                                          

NYに来て、宿を始めてから、歳を重ねるのは夜の海で泳ぐようだと思い始めました ひょっとしたらそう以前に書いたかもしれません

それまで記憶は積み重なってゆくものだと思っていたのに、強烈な印象を残した出来事や、絶対に忘れないと決めた経験や、どうしてなのかいつまもで心に残る景色や風や音が、ある時何かの拍子に突然蘇ってくる事を繰り返す間に、記憶がまるで深い海に浮かび上がったり沈み込んだりするもので、歳をとってゆくという事は、暗い海を泳ぐような感じだなと思い始めました 「記憶」達が泳ぐ私の手にいきなりぶつかっきたり、そうとは知らずに掴んでしまったり、自分の横を漂ってゆくのを眺めて、驚かされたり、嬉しくなったり、寂しくなったり、懐かしくなったりを繰り返しています 深く海に沈んでしまってもうきっと二度と思い出せない記憶や、忘れた事さえ気がつかないうちに遠くに消えてしまった記憶もあるのだと思います
それは満月のように明るくて波がきらきら光る海ではなくて、新月のように暗くてねっとりとした海でもなく、心地よくていつまでも泳いでいたい三日月夜の海です

それで言うと、あなたからのメールへの返事を出すのは、その三日月夜の海を深く潜って行く行為かもしれません

 2018.3.10.11:24
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俯いた表情ブーケ 
花びらはシルクサテンを、葉にはエナメルを使用し艶やかな印象です
押し花のようにプレスをして、上からPVC(ポリ塩化ビニール)と革のベルトを乗せて
ニッケルのビスでとめつけています